揺らぎを受け容れる器 教頭 土田 暢也
「卒業まであと○○日」。6年生の教室に掲示されています。そして、授業をしながら子どもたちの心身の成長を感じます。それと共に、思春期を迎えた子どもたちの揺らぎを感じることもしばしばです。『【思春期】:第二次性徴があらわれ、生殖可能となる時期。11~12歳から16~17歳までぐらいの時期。春機発動期。(広辞苑)』思春期は、上記のような生理学的変化に留まらず、多くの複雑な心理的変化が現れる時期でもあります。急激な年間の身長や体重の増加など、体のサイズが大きくなるだけではなく、大人の男性、大人の女性のような体つきへの変化があります。このような身体的変化に伴い、自己像の揺らぎが起こります。大人と子どもの狭間で戸惑い、自己否定的になることもあります。心の空間がまだ大きくなっていないのに、抱えなければならないもの、整理しなければならないこと、考えなければならないことが、急に増えてしまい、どうすることもなく揺らぎ、もがいている子どもたちもいるのではないでしょうか。また、脳の成熟などにより、知的機能が向上し、「正義」「愛」「自分らしさ」「死」などの抽象的なことも考えられるようになります。また、「人から見られた自分」「自分から見た自分」などを意識するようになり、自分の振るまいが他者からどう見られているかが気になったり、マナーや身だしなみに気を付けるようになったりする一方、引っ込み思案になったり、かたくなに自己表現を避けるようになったりする傾向も出てきます。そこで、大人として、心の空間を思春期の子どもたちに貸し、子どもたちが心の作業ができるスペースを作り出す必要があるのではないでしょうか。思春期の揺れを受け容れる。その上で、必要に応じてほめる、叱る、見守る、手を差し伸べることなどを心掛けいくことが大切だと思います。思春期の揺らぎを乗り越えるのは、子ども自身です。大人が解決する必要はないし、また、できるものではないとも思います。ただ、子どもが自力で乗り越えられない問題も少なくありません。だからこそ、すべての子どもたちに、心の空間を貸せる大人が必要なのではないでしょうか。その大人とは、家族であり、親戚であり、地域の人であり、教師であり得ると思います。そして、心の空間を貸せる大人であり続けたいと思う今日この頃です。